「あたらしい憲法のはなし」
日本国憲法が1947年5月3日に施行されると、その年の8月に文部省は、憲法学習の教科書として「あたらしい憲法のはなし」を発行し、全国の学校でこの教科書を使った授業が行われました。「あたらしい憲法のはなし」で、憲法9条はどのように教えられているかを見てみましょう。
日本国憲法が1947年5月3日に施行されると、その年の8月に文部省は、憲法学習の教科書として「あたらしい憲法のはなし」を発行し、全国の学校でこの教科書を使った授業が行われました。「あたらしい憲法のはなし」で、憲法9条はどのように教えられているかを見てみましょう。
みなさんの中には、こんどの戦争に、お父さんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとうとうおかえりにならなかったでしょうか。またくうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、今度の戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。このまえの世界戦争のあとでも、もう戦争は二度とやるまいと、多くの国々ではいろいろ考えましたが、またこんな大戦争をおこしてしまったのは、まことにざんねんなことではありませんか。
そこでこんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの国をほろぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその国となかよくして、世界中の国が、よいともだちになってくれるようにすれば、日本の国は、さかえてゆけるのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。
戦争の経験から、「もうあんな悲しいことがたくさん起こることは嫌だ」という国民の目線で、戦争のおそろしさが伝わってきますね。だからこそ、戦力も放棄する、戦争も放棄すると決めたのです。これは正しいことです。そして強いことです。