ニュース | 会報 No.32


新「防衛計画の大綱」

〜今後10年間の防衛整備の指針〜


菅内閣が2010年12月17日 閣議決定した「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(中期防)は、平和を求める国民の願いに背を向け、危険な日米軍事同盟の強化と軍備増強をすすめる計画です。 その柱は、専守防衛の理念に基づく「基盤的防衛力」の整備から、事態に機動的に対処するための「動的防衛力」への転換です。

新聞各紙は、理念なき政策転換、「戦う自衛隊」を目指すもの(日報 社説)。 「戦う自衛隊」への変貌(へんぼう)を意味する(琉球新報 社説)。 「専守防衛」などの原則を完全に空洞化し、北朝鮮や中国の「脅威」をあおりたて国内でも海外でも戦争に備える体制を強めるもの(赤旗 社説)と指摘しています。

新「防衛計画大綱」の特徴 〜これまでとこれからの変更点(質的強化)〜  (特徴的な変更点)

これまでの防衛計画 これからの防衛計画大綱
防衛力

基盤的防衛力

専守防衛の理念に基づく防衛力

の整備(自衛隊を全国に配置)

動的防衛力

事態に機動的に対処するための(必要に応じてどこにでも緊急展開する)防衛力

脅威 特定の脅威を想定せず 中国や北朝鮮の脅威を想定
重視 全国の部隊の平準化

・ 南西地域の軍事態勢の強化

・ 海外活動を積極的に推進(日常化)

・ 島しょ部に対する攻撃への対応

・ 国際平和協力活動への対応能力の強化

総合的・全体的

省略

・ 装備の運用水準を高め、動的な抑止力を重視

・ 即応性、機動性、柔軟性、持続性および多目性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築

陸上
自衛隊

編成定数15万5千人 15万4千人(−1,000)に
地対空誘導弾部隊 7個高射特科群/連隊(−1)に

・ 戦車 約600両

・ 火砲 約600門/両

・ 戦車 約400両(−200)に

・ 火砲 約400門/両(−200)に

・ 高い機動力や警戒監視能力を備え、多様な任務を効果的に遂行し得る部隊の配置

・ 島しょ部の防衛(与那国島等に沿岸監視部隊配備)

海上
自衛隊

・ 護衛艦部隊5個護衛隊

・ 潜水艦部隊4個潜水隊

・ 護衛艦部隊4個護衛隊(−1)に

・ 潜水艦部隊6個潜水隊(+2)に

・ 護衛艦47隻

・ 潜水艦16隻

・ 護衛艦48隻(+1)に

・ 潜水艦22隻(+6)に

航空
自衛隊

・ 航空警戒管制部隊 8個警戒群

20個警戒隊

・ 航空警戒管制部隊 4個警戒隊(−4)に

24個警戒隊(+4)に
弾道ミサイル防衛 ・ イージス・システム搭載護衛艦4隻 ・ イージス・システム搭載護衛艦6隻(+2)に
・ 地対空誘導弾部隊3個高射群 ・ 地対空誘導弾部隊6個高射群(+3)に

琉球新報社説 (2010年12月19日) 

新防衛大綱 ソフトパワーこそ必要だ

 政府は新たな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画を決めた。
 これまで防衛政策の基本に据えてきた専守防衛を実質的に放棄して「動的防衛力」という新たな概念を盛り込んだ。「戦う自衛隊」への変貌(へんぼう)を意味する。
 国民的な議論を十分尽くさないまま、安全保障の基本姿勢を変更したことになる。このような民主党政権の政策決定のやり方は、将来に禍根を残す結果を招きかねない。
 新大綱は南西諸島を含む島しょ部の防衛力強化を打ち出した。
 空自那覇基地はF15戦闘機を1・5倍に増やし、海自は南西地域の警戒監視に向け潜水艦やヘリコプター搭載護衛艦を整備。陸自は与那国、宮古、石垣島と想定される地域へ部隊配備する。
 一方で民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げた日米地位協定の改定については触れていない。負担軽減の具体策は見あたらない。沖縄にとって米軍基地の負担軽減どころか、自衛隊の配備強化でますます過重な負担がのしかかることになる。
 新大綱は「我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」と指摘している。にもかかわらず、日米同盟を「深化・発展させる」と記述し、情報、周辺事態、弾道ミサイル防衛などで協力を強化する。シーレーン(海上交通路)確保や宇宙、サイバー分野、気候変動分野の連携も盛り込んだ。
 何のために米軍と一体化するのだろうか。逆に周辺国は日本への警戒を強め、軍事力を増強する可能性が高まるだろう。米国への協力を強化すればするほど、自国ではなく同盟国の戦争に巻き込まれるリスクは増大する。「安全保障のジレンマ」に陥っている。
 武器輸出禁止措置を講じている武器輸出三原則の見直しに含みを持たせた。自衛隊の国連平和維持活動(PKO)への派遣条件を定めたPKO参加5原則を見直す可能性にも触れている。原則のなし崩しは危険だ。
 新大綱はハードパワー(軍事力)については盛り込まれているが、科学技術や文化、外交力を使って相手を引き寄せるソフトパワーについてはほとんど触れていない。むしろ「平和国家」というソフトパワーを減らしている。
 軍事力をいかに使うのかではなく、戦わずして相手を魅了する方法こそ研究すべきだ。

琉球新報 http://ryukyushimpo.jp/